グランドカノニカルのN!

Yさんに、グランドカノニカルのN!の意味について、興味深い話を聞いた。

☆グランドカノニカルのN!

多くの統計物理学の教科書では、
グランドカノニカルアンサンブルを導出するとき、
スタート地点を量子力学にしているらしい。
実際、そのように習った記憶があるし。

この記述を古典系に持ってきたとき、
状態数にN!の因子が含まれているのだが、この意味は
『本来、粒子に区別はつかないのだけれど、
古典系では粒子に番号を振っている(区別がつく)から、状態数を数えすぎている。
それを避けるため、N!の因子が必要になる。』

では、スタートが古典系の場合は、N!はいらないのか?
つまり、古典系では粒子に区別がつくのだから、数えすぎていることはないから。

カノニカルアンサンブルの場合、このような問題は考える必要なあまり(?)ない。
確率分布の、分母にも分子にもN!の因子が含まれているため、
どうせ割り切れちゃう。
グラカノではそうはいかない。

ここでは、注目する系と粒子浴の系の合計がM個の粒子があり、注目する系にN個粒子がある問題を考えてみる。

ラベル付けが可能なので、注目する系にN個粒子がある状態は、
M!/(M-N)!N!通り。
ここで、Mが十分大きいので、M!/(M-N)!は寄与しない
なので、N!の因子はやはり必要になる。

以上のような話だったわけだが、ノートをとっていると、
M!/(M-N)!~1になるのがいまいち分からない自分がいた。
もう少し、聞いてみよう。

☆ワニアー統計物理学
このN!について似た問題について、ワニアーでは、
ギブスのパラドックスの節で紹介していた。
ただし、扱っている系はカノニカルアンサンブル。

自由粒子系において、エントロピーSを計算する。
S=UT+lnZ
N!因子なしバージョンでは、エントロピーは示量性を満たさないが、
N!因子ありバージョンでは、エントロピーは示量性をみたす。

このような特徴は、二つの、同じ粒子を入れている箱をくっつけたときに
エントロピーがどうなるかを考えると、問題が生じる。
(混合エントロピーの問題?)

箱をくっつけて、中の壁を引き抜く。
この操作は、可逆操作で熱も仕事もいらない。
するとエントロピー変化は0なわけだが、
N!因子なしバージョンでは、混合のエントロピーが生じてしまい、
困ってしまう。

この点から、N!因子は必要となってくるが、
自由粒子系でしか試していないわけで、納得しにくいかも。

☆まとめ
グランドカノニカルではとりあえず、N!で割っておけと。
カノニカルでは、確率を用いて求める量は問題なさげ(エネルギーとか)
直接、分配関数をいじくる問題は、大変そう。